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泣き暮らす玄宗皇帝の為、亡き楊貴妃の魂を探す使命を負った方士(霊能者)。
次元を超えて遂に仙郷で楊貴妃の魂を探し当てた。同じく皇帝を慕い泣き暮らしていた楊貴妃。ふたりの想いはひとつであると皇帝に伝えるため、方士は形見の簪と、誓いの言葉を預かった。
「天にあらば願わくは比翼の鳥とならん 地にあらば願わくは連理の枝とならん」
想い出の舞を舞い、貴妃は泣く泣く方士を見送るのだった。
楊貴妃ようきひ
源氏物語より。夕顔の女の霊が供養を頼んで雲林院の僧の前に現れる。白い花が微笑むような可憐な姿。 五条辺りへ誘われ、出向いた僧が見た幻は夕陽に移ろう半蔀の陰に半ば隠れた美しい女。 僧の弔いに夕顔の霊は、恋の想い出を語り始める。光源氏との美しい出逢い、共に過ごした時の幸せ。 五条の家は恋の幸せに輝き続ける。夜明けとともに女の魂が還ってゆくのは、半蔀の中なのだ。
半蔀はじとみ
星の如く鼓とともに天から降り生まれた少年・天鼓。天の鼓を奏でる星の子だ。 皇帝の命令に背き鼓を隠した罪で、河に沈められてしまう。老父は勅命により亡き子の形見の鼓を打つ。 天の鼓が鳴り響く。世を隔てても親子の魂は響き合った。天の川が河面に輝く七夕の夜、皇帝は弔いの祭を催した。
満天の星の中、天鼓の霊は鼓を打ち舞い遊ぶのだった・・・
天鼓てんこ
南無阿弥陀仏と唱える声が、嵯峨清凉寺に響きわたる。声を合わせ、想いは増幅して浄土へ届く。我が子と生き別れた母は一縷の望みをかけて、この寺で謡い舞い探し求める。 子への思いは首枷となり、重荷を引いて廻り続ける車のようだ。 若葉萌える奈良の旅路に母の悲しみが鮮やかに浮かび上がる・・・
百万ひゃくまん
兄頼朝に追われ、悲劇の運命を辿った源義経。その存在感は圧倒的であったが故に、取り巻く人々の物語も様々にドラマチックだ。忠臣弁慶により別れを促された静御前は、渾身の舞いに込めて愛する人の前途を祈る。 出港した船に、嵐を起こして襲い掛かるのは平知盛。壇ノ浦合戦における平家軍の総大将だ。次第に追い詰められ次々と討たれ、また海底に沈んでゆく一門を見届けた末に自害した。すべての怨念を背負って義経に迫る・・・
船弁慶ふなべんけい
陸奥の安達ヶ原の黒塚に鬼こもれりと聞くはまことか…古歌に着想を得た、哀しくも凄まじい能である。 旅の途中、宿を借りる山伏一行。粗末なあばら屋に住む女は、枠桛輪(わくかせわ)を使って見せる。賤しい仕事に追われる身は心の闇が救われることもなく、巻き戻せない糸車のように残酷に時が過ぎてゆく。女が薪を取りに出た隙に奥の間を覗くと屍累々。正体を現した人食い鬼が襲いかかり激しい闘いとなる。
安達原あだちがはら
白砂青松、富士山を望む三保の松原に舞い降りた月の天人は、漁師白龍に取られた羽衣を返し受け、その返礼に天上の舞を下界に伝えた。 ひととき地上に戯れた天人は、再び西の空へと昇ってゆく。その舞姿はいにしえ、地上に恵みをもたらすと信じられた月の流転、そのものなのだ・・・
羽衣はごろも